JUMEAUX OBSCENES Respect a SPANK HAPPY


普通の恋
 世界を毎日呪い続けている「彼」と、復讐を止められない「彼女」との「普通の恋」の歌。と言っても、歌詞の殆どは、二人が出会う以前について描かれていて、出会ってからは、「普通」という単語に要約されバッサリ省略されている。各人は「普通」という意味の広い言葉の中に、自由にイメージを挿入することによって、自分の近くへと引き寄せる事が出来る。と、歌詞の事を長々と書いたが、実際はアレンジの秀逸さが光る作品。CD化されてもなく、今後される事も無いであろうとされている、90年代最後のSPANK HAPPYの名作。

<2004年2月追記> Viewsic DISCSの強烈なラヴコールにより、2004年1月28日、SPANK HAPPYではなく、“ 菊地成孔 feat. 岩澤瞳”名義でCDが発売される。若干の歌詞の変更と、大幅なアレンジ(メロディライン含む)が施され、爽やかなAOR風となり生まれ変わった。

キーワード
聞こえてくるよアーバン・ブルース 21世紀型のアース・ビート・ブルー
 実際に流れていたのは、「有線放送からのヒット・チャート・チェイン」なのだが、二人の心にはブルーがベッタリと貼り付き、湧き出ている。
 アーバン・ブルース:文字通り、都会の生活そのものに焦点を当てたブルース(憂鬱)。アーバン・ブルースという言葉は、元々アップタウン・ブルースをカントリー・ブルースと区別するためのものであった。現在のような意味合いをもつようになったのは、1940年代に入ってから。ブルースの他の種類:カントリーブルース(「ミシシッピ・デルタ」、「テキサス」、「イースタン」)、シティ・ブルース、クラッシック・ブルース、モダン・ブルース、シカゴ・ブルース
11歳でドストエ フスキー
 10代前半でドストエフスキーに傾倒すると言う事には、沢山の意味が含まれていると思いますが(ありすぎて、まとまりません)、簡単に言うと、この後の歌詞をにも出てくる、「革命」「殺人(自殺を含む)」「神」への考え方、接し方に影響を与えたという事でしょう。
 ドストエフスキーについては、こちらを参照下さい。
15歳でエヴァンゲリオン
 ここで、普通の恋が作られた1999年(たぶん)当時、「彼」は18〜20歳である事が分かる。15歳という数字は、エヴァンゲリオンのキーワードの一つである、14歳よりも1歳熟しているという事になる。アニメの中の主人公を過去の自分として重ねているのか、過ぎてしまったどうしようもなさを感じているのか。
 新世紀エヴァンゲリオン:1995年10月より1996年3月までテレビ東京で深夜放送され、劇場版にもなったテレビアニメ。放送終了後、アニメファンの枠を超え、文化知識人までも巻き込み一大ブームを巻き起こした。「エヴァンゲリオン」はサブカルチャー的な宗教(ユダヤ・キリスト教、死海文書等)、心理学、哲学、一種ペダンチックともいえるイメージを、説明を殆どしないままに断片でつなぎあわせ、主人公である少年が、状況に流され続ける心とともに加速してゆく。物語の中で、近代西欧哲学のアポリア(二律背反=矛盾)が生じていく所も魅力の一つであった。企画・原作:GAINAX 総監督:庵野秀明 キャラクターデザイン:貞本義行 →関連URL
ハンパに高いIQ
 IQとは、Intelligence Quotient(知能指数)と言い、簡単なテストに精神年齢と生活年齢などを加味し算出される、(子供の)知能の発達(得られた情報を上手に知識化する能力が高いかどうか)を評価するための指数である。「ハンパに高い」というのは、情報に翻弄されやすいという意味だと思う。この曲が作られた頃、EQ(Emotional Intelligence Quotient)という判断基準が出てきて、頭と心は全く別であるという考えが定着してゆく(IQ神話の崩壊)。また、IQと食べ物の因果関係も常識とされているところから、「彼」の子供の頃からの食生活は良かったという意味合いも含まれているのかも知れない。
たった一度だけ 恋に落ちてみたこともあったけど
 「恋に落ちてみた」と言うのが、恩着せがましい。自分の過去を後悔し、封印しようとしている。
考えられ得る最悪の結末を迎えた
 一体、どんな事があったんでしょう? 考えられません。
人類が決してやめようとしない
 恋にはドラッグ的な意味合いがあるんでしょう。この対義語に「セックス」が存在している。菊地さんは、「そのうちセックスは絶滅する」と言っていますが……。
5歳の時にパパにされた事に対する復讐
 一体、どんな事があったんでしょう? 思いつき過ぎるんですが……。
結局チョコレートが必要
 チョコレートは媚薬。色々な事を解決してくれます。
彼氏を待ってたのは 驚くべき事/彼女を待ってたのは 驚くには値しない
 男女によって受け取り方が正反対。女の子はいつでも元気だと言う事だと思う。
普通
 「恋をして」「手を繋いで」「キスをして」泣いたり笑ったり、「抱きあって」「甘えあって」「ケンカして」泣いたり笑ったり。結局みんな、恋人同士は簡単に言うと同じ事をしているということ。