JUMEAUX OBSCENES Respect a SPANK HAPPY


麻 酔
 失恋のバラード。恋が終わった事を、脳の海馬の端っこでは判ってるんだけど、それ以外の部分では全然判っていなくて、段々感覚が無くなっていくような、同時に強くなっていくようなこの感じは、まるで麻酔が効いていくみたいだわー、と言うような内容の歌。瞳ちゃんのソロ曲。
 コード進行は Cole Porterの"Just One of Those Things"の写しであることを菊地さん自身が公言している。始め、『50年代的なアメリカのジャズのバラードに広東語の歌詞を』と言う趣向にしようと思ったが、諸事情により間奏のナレーションのみに起用する事となった。

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コール・ポーター
 コール・ポーター(Cole PORTER)。1891年 アメリカ、インディアナ州生まれ。大富豪の家に生まれ、幼少の頃からピアノ等での作曲に才能の片鱗が見えていた。イェール大学に進学。祖父の意向でハーバード大学にて法律を学ぶ。しかし、中退し音楽家に転身。パリに渡る。1919年、離婚歴のある女性と同性愛者である事を隠す為に形だけの結婚。貧しい者のジャズの世界で、ポーターはリッチでお洒落。時代に対してシニカルなスタンスを取る作曲家であった。ポピュラー・ソング、ミュージカル、映画音楽などを手掛け、30〜40年代にはアメリカで最も人気ある作詞・作曲家になる。1937年、落馬事故で足を痛め、1958年、右足を切断。1964年10月15日死亡。代表作。曲「I've Got You Under My Skin」「Night And Day」「You'd Be So Nice To Come Home To」。映画「上流社会」など。
Just One of Those Things
 邦題「よくあることさ」(菊地さんは「他愛もない物」と呼んでいるが、こちらの表記の方が多いようだ)。ミュージカル「Jubilee」のために書かれた曲だが、映画「Young At Heart」ではシナトラが、映画「Can Can」ではモーリス・シュバリエが歌っている。よくある事というのは恋を失う事。意訳「これもよくあることの一つさ。君との出会いに酔い、素晴らしい夜を過ごせたし……。僕らの恋は余りにも熱くなりすぎて、冷めないわけにはいかないだろう。まあ、また会えるかもしれないし……。こんなことはよくあることさ」強がりいっぱいの歌。→参考1参考2
ねえ 体も 心も
 心と体のバランスが崩れた時、始めに気付くのは体の異常である。
最初にキスをしたときみたい 動けないの
 初めての恋なのか、それに近いものである事を表している。初々しい感じ。失恋は何度しても、あまり慣れるものではないが、恋の始まりは、慣れによって変化していく場合が多い。
最初に裸になった時
 一般的には、性的関係を結んだ時を表しているんでしょうけど、どうも色々湾曲した意味合いがあるように感じてしまう。変態的な……。
一言も話さないで  あたしを見てるだけ
 後の歌詞を読むと、この時男が何も言わないのに、女が別れの時が来た事を感じ取っている事が分かる。愛する人を失うという事に関しては、多くの経験を持った女である。
麻酔をかけられて泣いているの?
 始めてこの曲を聞いた時、失恋の歌だと思わなかったので、痛い注射をしたりして、単純に非道い恋人だなぁと思った(苦笑)。泣いている女を前に、「一言も話さないで見ているだけ」という状況はどういうことだろう。何もしないなら、立ち去ればいいのに。
さよならも聴こえないままで
 「きこえる」に「聴」という漢字を当てている。意識的な間違いか、もしくは、麻酔によって薄れてゆく意識を表しているのかもしれない。